共依存関係とは、二人のアダルトチルドレン(共依存症者と依存症者)が結びつく病理的関係のことです。

依存症者とは?
幼い頃の家庭内トラウマによる心の空虚感をモノや行為で解消しようとする症状です。「やめたくてもやめられない」状態になってしまうことです。
「モノ」への依存として、アルコール依存症や薬物依存症などがあり、「行為」での依存として、ギャンブルやある特定の行為に熱中するというものがあります。
どちらも、繰り返し、刺激を求め、逃れることの出来ない、心身共にダメージがあり、社会生活に支障がでてしまいます。
共依存症者とは?
幼い頃の家庭内トラウマによる心の空虚感を対人関係で解消しようとする症状です。
親の大きな期待に応えたり、家庭内不和を何とかしようとして大人の振る舞いをすることで自分の価値観を感じた子どもが大人になると、人の心を世話することで自分の存在価値を見いだし、その対象となる相手(依存症者)を見つけて心の空虚感を解消しようとします。
- 自己愛の障害:適切な自己評価が出来ない。他人からの評価しか分からない。
- 自己保護の障害:自己と他者の境界が分からず、他者に侵入したり他者の侵入を許す。
- 自己同一化の障害:自己の現実が認識出来ない。自分のやりたいことが分からない。
- 自己ケアの障害:自己の欲求を伝えることが出来ない。NOもYESも言えない。
- 自己表現の障害:自己の現実(年齢や状況)にそって振る舞えない。
共依存症者は、他者の世話をして、それを評価されることでのみ認められてきたため、上記の5つのことが困難となります。
共依存症者の障害からの症状行動
共依存症者は、5つの障害を抱え続けると以下に述べる症状行動を起こします。
1.否定的コントロール
他者に頼られることで自己の存在を認めさせ、自分自身の安心も得ようとします。相手に・・・であるべきと押しつけたり、相手を下に見たりします。自分がコントロールしやすい身近な存在を常に必要とします。
2.恨み
自分の事を後回しにして他者の世話を焼いたのに、それが報われないと、この感情が生まれます。共依存症者は怒り狂う他者にはすぐに屈服し耐えます。これは相手の怒りで傷つく自分を保護できないからです。怒りを向けるべき相手に向けず感情は自身に蓄積され恨みとなります。そしてこの恨みを自分より弱い相手にぶつけたりします。
3.スピリチュアリティの障害
共依存症者は、他者に頼られるとその人をより支配しようと、その関係性を強化していきます。故に周囲の他者に対して通常の交流関係が築けません。これは共依存症者は常にスピリチュアリティの歪みを抱えており、自己と相手しか視野になくて社会や周囲の他者が見えていない二人だけの世界であることを意味します。共依存症者は、自己と依存症者というカプセル化した関係の中で、隔離して生きています。
4.嗜癖と心身の障害
共依存症者の恨み、不安、空虚感などは抑圧された怒りと混ざり、無気力やうつとなります。それを逃れるために身近な手段として用いられるのが嗜癖です。嗜癖は一時的には効果がありますが、結果として身体的障害(アルコール依存からの肝硬変など)を抱えて、体調を壊すことがあります。
5.親密性からの逃避
共依存症者は一見、依存症者と親密に見えますが、その親密は依存症者に対して精神的優位を保っていたり、依存症者に逆に依存しているときに限られます。あくまでも服従的・支配的な関係性で心温まるような関係性ではありません。なので共依存症者は、お互いが距離を保った対等な親密な関係が築けそうになると、相手の心の世話が出来なくなり急に不安になり逃げ出します。「自分はもういらない人なのか?」という思いから、他の相手を探しにいく行為です。
共依存症からの回復
共依存症からの回復は、対等な親密性を築くことです。
共依存関係においての関係性は、親密なようにみえて本質は全く違います。本来、親密とは、不安や支配的なことに束縛されない関係性です。親密の根底にあるのは自己肯定感です。でも、共依存症者の多くは、自己存在価値を持てなかったり自己評価が困難だったりで、共依存関係を手放すことができません。
回復には適切なプロセスが必要となってきます。それには、回復に向かうためのプロセスを適切に提示してくれる心理カウンセラーに援助してもらうことはとても有効です。
★共依存症回復のためのプロセス
- 他者をコントロールすることは不可能、絶対無理と気づく。他者に向けるエネルギーを自分に向ける。
- 強い引力を感じる人には近づかない。気になっても留まる。
- 極力外に出て、人の支援を受ける。他者と触れあう。
- どうってことないと言う振る舞いをついしてしまうので、自分で気付く。信頼できる人に話す。
- 自分の言動に責任を持った発言を心掛ける。「私は~だから!」「私は~」で自分の意見を述べる。
- 自分と他者は考えや感じ方が違う、それぞれみんな違うんだと自覚する。
- 自分の直感を信じる。
- 信頼できる仲間と怒りについて話す。
- 過剰な罪の意識を捨てる。自分は悪くないと、その場を離れる。
- 深く入り込まず、ほどほどにする。グレーゾーンを思い浮かべ、1つの物事を2つの側面から見るようにする。
- 過去の辛い経験を忘れないよう、日記など記録をとっておく。
- 他者を無理に救おうとしない。人の人生に介入しすぎず、自分にエネルギーを向ける。
- 自己の確立(自分は何者か、自分らしさ、人生の目的など)に力を注ぐ。
心理療法の手法として、上記のようないくつかの課題を克服していく行動療法を用います。心理カウンセリングにより、回復のための課題を適切にクライエントに提示し、体験から考え、そこからどんな気持ちになったか、行動してみて抵抗はないかなど、課題を克服できるよう援助していきます。少しずつでも無理なく進めていくことです。